○井手町人権尊重のまちづくり条例
令和7年12月19日
条例第31号
前文
「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」とうたう世界人権宣言の理念は、人類普遍の原理である。
我が国では、基本的人権の尊重を基本原理とする日本国憲法及び市民的及び政治的権利に関する国際規約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約をはじめとする国際人権条約の下、部落差別の解消の推進に関する法律(平成28年法律第109号)、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)及び本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成28年法律第68号)が制定されるなど、差別解消に向けた取組が進められてきた。
井手町においても、この間、人権を尊重する社会の実現に向け、人権教育及び人権啓発の指針となる井手町人権教育・啓発推進計画を策定し、人権尊重を基本とした施策の推進に努めてきたところである。
しかしながら、依然として、人種、信条、性別、社会的身分、門地等によるあらゆる差別(以下「あらゆる差別」という。)が存在しており、さらには、情報化の進展に伴い、新たな媒体を介しての差別を助長する掲示や誹謗中傷などが顕在化している。
これらの人権問題については、差別を受けた者等にその解決の責任がないことは当然であり、差別を行った者がその責任を負わなければならない。また、これらの人権問題の多くは、社会構造の中で生じており、社会として解決していくことが必要である。私たち一人一人がその当事者であるとの認識の下、自他の人権を尊重し、差別をはじめとする人権問題の解消に向けて取り組んでいかなければならない。
私たちは、あらゆる差別は決して許されるものではないとの認識の下、すべての住民の人権が尊重されるまちづくりの実現を目指し、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、人権尊重のまちづくりに関し、井手町(以下「町」という。)、住民及び事業者(以下「住民等」という。)の責務を明らかにするとともに、あらゆる差別は決して許されるものではないとの認識の下、その施策に必要な事項を定め、もって、すべての住民の人権が尊重される社会を実現することを目的とする。
(1) 住民 町内に居住し、又は通勤若しくは通学をする者をいう。
(2) 事業者 町内で事業活動を行う者をいう。
(3) 差別 人種、信条、性別、社会的身分、門地、民族、国籍、年齢、性的指向(性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(令和5年法律第68号)第2条第1項に規定する性的指向をいう。)、ジェンダーアイデンティティ(同条第2項に規定するジェンダーアイデンティティをいう。)障がい、疾病、出身その他の属性(以下「人種等の属性」という。)を理由とする不当な扱い、排除、又は制限であってあらゆる分野において、権利・利益を認識し、享有し、又は行使することを妨げ、又は害する目的又は効果を有するものをいう。また、正当な理由なく人種等の属性を理由に、サービス若しくは機会の提供を受け入れないこと、又は当該提供に当たって場所、時間帯等を制限し、若しくは当該人種等の属性を有さない者に対しては付さない条件を付すことその他の不当な差別的取扱いによるものをいう。
(基本理念)
第3条 あらゆる差別の解消を図るための施策及び住民等が行う人権尊重に関する活動は、次に掲げる事項を基本理念として推進されなければならない。
(1) 社会のあらゆる分野において人権が尊重されること。
(2) 対話を通じて差別の解消を図ることが重要であること。
(3) 差別の解消に当たって障壁となるような社会における制度、慣行、観念等の改善を図ること。
(4) 差別の意図の有無にかかわらず、その解消を図ること。
(5) 差別を行った者がその責任を自覚すること及び差別を受けた者等の心情等を理解することを社会として促進すること。
(6) 差別を受けた者等がその困難を乗り越えることができるよう社会として支えていくこと。
(7) 差別の解消を図ることにより、多様性が尊重され、誰一人取り残されることのない共生社会の実現に寄与すること。
(差別の禁止)
第4条 何人も、差別をしてはならない。
(表現の自由等への配慮)
第5条 この条例の規定の適用に当たっては、表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由及び権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。
(町の責務)
第6条 町は、第3条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、町行政のあらゆる分野において人権尊重の視点に立って取り組むとともに、差別を解消するための取組をはじめとする人権施策を総合的、積極的かつ計画的に推進するものとする。
2 町は、人権施策を推進するに当たっては、関係部局等相互の緊密な連携を図るとともに、国、京都府(以下「府」という。)、関係団体と連携・協力するものとする。
(住民等の責務)
第7条 住民等は、基本理念に基づき、基本的人権を尊重し、自らも人権意識を高めるよう努めるとともに、町が行うあらゆる差別の解消を図るための施策に協力するよう努めるものとする。
(推進方針の策定等)
第8条 町は、第6条に規定する施策を行うに当たり、井手町人権教育・人権啓発推進方針(以下「推進方針」という。)を策定する。
2 推進方針に、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 人権教育及び人権啓発に関すること。
(2) 人権相談体制に関すること。
(3) 人権施策の推進体制に関すること。
(4) 前3号に掲げるもののほか、あらゆる差別の解消を図り人権が尊重される社会の実現に関すること。
3 町は、推進方針の策定にあたっては、住民の意見を反映させるために必要な取組を行うものとする。
4 町は、社会情勢の変化等により必要が生じたときは、推進方針を見直すものとする。
(調査の実施)
第9条 町は、推進方針に基づく施策を効果的に行うために、国及び府が行う調査に協力するとともに、必要に応じて、人権に関する住民の意識調査等を行うものとする。
(教育及び啓発の実施)
第10条 町は、推進方針に基づき、国及び府との適切な役割分担を踏まえて、あらゆる差別の解消を図るための教育及び啓発を行うよう努めるものとする。
(推進体制の充実)
第11条 町は、推進方針に基づく施策を効果的に行うために、国、府等と連携を図るとともに、推進体制の充実を図るよう努めるものとする。
第2章 差別の解消に向けた体制の充実
(相談業務)
第12条 町は、差別を受けた者又はその親族からの差別に関する相談(以下「相談」という。)に応じなければならない。
2 町は、相談があったときは、次に掲げる業務を行うものとする。
(1) 必要に応じて関係機関と連携して、助言、関係者間の調整その他の必要な対応を行うこと。
(2) 必要に応じて関係機関への通告、通報その他の通知を行うこと。
3 相談に応ずる者は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
(申立て)
第13条 住民等で、差別を受けた者は、当該差別について、町長に対し、当該差別を解消するために必要な助言又はあっせんを行うべき旨の申立てをすることができる。
2 差別を受けた者の親族は、当該差別について、当該差別を受けた者に代わって、町長に対し、当該差別を解消するために必要な助言又はあっせんを行うべき旨の申立てをすることができる。
3 前項の申立ては、差別を受けた者の明示の意思に反してすることができない。
(1) 裁判所による判決又は公的な仲裁機関若しくは調停機関による裁決等により確定した権利関係に関するもの
(2) 裁判所又は公的な仲裁機関若しくは調停機関において係争中のもの
(3) 申立ての原因となる事実のあった日(継続する行為にあっては、その行為の終了した日)から3年を経過したもの
(4) 差別に係る相手方(以下「相手方」という。)が不明であるもの
(5) 町の区域外で生じたもの。ただし、差別がインターネットその他の高度情報通信ネットワークを利用する方法により行われた場合であって、内容が住民等に関するものであると認められるときは、町の区域内で生じたものとみなす。
(助言又はあっせん)
第14条 町長は、申立てがあったときは、当該申立てをした者(以下「申立人」という。)又は相手方に対し、助言又はあっせんをすることができる。ただし、助言又はあっせんをすることが適当でないと認められるときは、この限りでない。
2 町長は、申立てがあったときは、当該申立てに係る差別の事実関係について調査を行うことができる。この場合において、申立人及び相手方は、正当な理由がある場合を除き、これに協力しなければならない。
3 町長は、助言若しくはあっせん又は前項の規定による調査を行うにあたり必要があると認めるときは、その対象となる差別に関係する町の機関に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
4 町長は、助言又はあっせんを行うにあたり、あらかじめ井手町人権尊重推進委員会(以下「委員会」という。)の意見を聴くものとする。ただし、前2項に規定する調査の結果等から委員会に意見を聴く必要がないと町長が認めるときは、この限りでない。
5 助言又はあっせんの対象となる差別の当事者が、町の職務の執行に関わるときは、前項ただし書の規定にかかわらず、町長は、助言又はあっせんを行うに当たり、あらかじめ委員会の意見を聴くものとする。
6 町長は、あっせんによっては申立てに係る差別の解消の見込みがないと認めるときは、あっせんを打ち切ることができる。
(あっせんに関する勧告)
第15条 前条第1項に規定するあっせんに対し、正当な理由なくこれに従わないときは、町長は、差別を行った者に対し、その差別を解消するための措置を取るよう勧告することができる。
(意見の聴取)
第16条 町長は、前条の規定による勧告をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告の対象となる者にその理由を通知し、その者に対し、弁解の機会を与えなければならない。
2 第15条に規定する勧告に従わず、差別を反復・継続する等、悪質な行為と認められる場合は、氏名又は名称を公表することができる。
3 町長は、前項に規定する氏名又は名称を公表しようとするときには、あらかじめ委員会の意見を聴くものとする。
2 委員会は、必要があると認めるときは、その指名する委員に、あらかじめ指定する範囲で前項の調査を行わせることができる。
(町長が申立ての相手方である場合)
第19条 委員会は、町長が申立ての相手方である場合には、差別の事実関係について調査を行う。
2 委員会は、申立てがあったときは、当該申立てに係る差別の事実関係について調査を行うことができる。この場合において、申立人、相手方は、正当な理由がある場合を除き、これに協力しなければならない。
3 委員会は、助言若しくはあっせん又は前項の規定による調査を行うにあたり必要があると認めるときは、その対象となる差別に関係する町の機関に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
4 委員会は、第2項の規定により調査を行うときは、町長に対してあらかじめ当該申立ての事実を通知し、弁解の機会を設けなければならない。
5 委員会は、第1項の調査を行った場合において、その内容を公表する。
第3章 声明
(声明)
第20条 町長は、差別に該当する事案で深刻なものが発生した場合において、必要があると認めるときは、住民等への差別意識の広がりを抑えるため、声明を発出することができる。
2 町長は、前項の規定により声明を発出しようとするときは、あらかじめ委員会の意見を聴かなければならない。ただし、緊急を要する場合で、かつ、その意見を聴く時間的余裕がない場合は、この限りでない。
3 委員会は、前項本文の規定により意見を聴かれたときは、町長が定めた期間内に町長に答申するものとする。
5 委員会は、第2項本文の規定により意見を聴かれた場合において、その調査のため必要があると認めるときは、関係者に意見を述べる機会を与えることができる。
第4章 人権尊重推進委員会
(人権尊重推進委員会の設置)
第21条 町長は、次項各号に掲げる事項を行わせるため、委員会を置く。
2 委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。
(2) 第20条第4項の規定により町長から報告を受けること。
3 委員会は、委員5人以内で組織する。
4 委員は、人権に関する豊かな知識及び経験を持ち、中立性及び専門性を有する、学識経験者、団体の役員又は構成員から、町長が委嘱する。
5 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員の再任は妨げないものとする。
7 前各項に規定するもののほか、委員会の組織及び運営について必要な事項は、規則で定める。
(守秘義務)
第22条 委員会の委員は、職務上知り得た秘密を洩らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
第5章 雑則
(委任)
第23条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。
附則
この条例は、令和8年4月1日から施行する。